残業

残業

俺が会社で7年くらい前に体験した話。

俺は食品製造なんだが、客の特注品を作って納品するのが主な仕事。

そのため、他の営業と違って、デスクは試作キッチンに隣接した小部屋にあった。

同僚の営業とふたり、夜9時過ぎても書類が終わらず黙々とキーボードを叩く。

灯りを消した誰もいない隣のキッチンから、ドアを開けて閉める音がした。

キッチン内のドアは倉庫と、俺達がいる部屋につながるドアだけ。

外廊下への出入口には俺達のデスクの脇を通って行くので、試作スタッフが全員帰ったのはこの目で確認済み。

キッチンと俺達の部屋のドアは常時開放してるので、暗いキッチンの中で誰かが倉庫のドアを開けて閉めたとしか考えられない。

同僚と俺は、あまりの怖さに作業中のファイルをそそくさと保存して逃げ帰った。

倉庫のドアが開け閉めされたか確認するような根性はなかった。

俺の会社は、帝国陸軍の施設跡に造成された工業団地にあるんだが、たまに怪異は起こったんだ。

冷凍倉庫の中、商品をパレットに積み上げて並べてある上をぴょんぴょん飛び跳ねて走り回る黒い人を、出庫のバイト君が目撃してしまってその日に辞めたこともある。

試作スタッフとして入社してきた女性が、「このキッチン何かいます」と言って半年で辞めたこともあった。

若手の営業マン(俺とは違う部署)が、残業の気分転換にと夜中の会議室でリフティングをしてた。

会議室は3階で、窓ガラスに向かってやってたが、自分の後ろを白い服の女性が通ったのが映る。

実は俺のいたチームのキッチンは会議室と同じフロアにあるので、試作スタッフだろうと思ったそうだ。

しかし会議室には自分以外誰もいないので、慌てて事務所フロアに戻って、仲間に報告した。

俺と一緒にドアの音を聞いた同僚は、それより前に一度キッチンで白い服の女性と遭遇してる。

ひとりで残業してるとき、何を思ったか、誰もいない試作キッチンを携帯で撮り、カミさんにメールしたそうだ。

カミさんからの返信は、

「遅くまで残業してる女の子がいるね」

だったそうで、白い服を来てこちらに背を向けた髪の長い女性が写っていたという。

この日はキッチンの灯りはつけたままだったが、試作スタッフは誰もいなかった。

携帯のその画像を見ないようにして消去したのだと、同僚はのちに俺に語った。

こうした件と無関係だとは思うんだが、この同僚は3年前に転落事故で亡くなった。

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