道路にいた集団の幽霊
俺が、親しい人から聞いた話。
今から十数年前のこと。
彼女が仕事の帰りだったか、深夜に大阪方面へ車を走らせていた。
そんなとき、道端に20~30人のお遍路さん(四国八十八箇所を巡る人)の軍団がいたそうだ。
遍路巡りのバス待ちかと思い、彼女は横を通り過ぎたのだ。
ふとバックミラーを見ると、先ほどの人たちがいない。
彼女は不思議に思ったが、そのまま車を進めたそうだ。
そしてその後。
彼女の妹も、同じような集団を同じ現場で見たことがあると話したそうだ。
妹は、旦那とドライブ中に遭遇したそうだ。
不思議なことにその集団を妹には見えて、旦那見えなかったらしい。
見た場所やその集団が一致したことに、彼女は何を思ったのか、次の日にその場所へ再び向かった。
車を止めて、その場所をよく見てみると、そこは断崖絶壁の海岸だった。
更に道を挟んだ反対側は山。
道が大変狭く、一人でならともかく、あんなに大勢立てる訳がないそうだ。
更には、海側にはガードレールというか柵が並んでいたが、一部だけ欠けていたらしい。
怖くなった彼女は、直ちに車に乗り込み、走らせると、近くのドライブインに寄った。
そこの店員とさり気なく、あの目撃談を話してみると、どうやらあの現場は目撃談多発地帯だったようなのだ。
数年前、バスの転落事故で大勢の死者が出たらしく、その後お坊さんが供養したそうだ。
それからまたしばらくしたある日のこと。
彼女は、信仰している宗教のお坊さんと話す機会があり、あのお遍路さんの集団のことを話したところ、そういうのを見る人はたくさんいるらしい。
そしてあの集団は、怖いものではなく、むしろ道中安全を祈る存在だそうだ。
なお、彼女はその集団の顔が見えたそうだが、笑顔は笑顔でも、本当に生きている人の笑みで、確かにお坊さんの言うとおり、安全を祈ってるようだったらしい。