鏡の中にいる人物

鏡の中にいる人物

鏡の中にいる人物

友人に起こった話。

三連休中に久しぶりに会って思い出したので投下。

去年の十月初めくらいに、友人(Hとする)から「鏡の向こうにいる奴とよく目が合う」って相談された。
道路にいた集団の幽霊

俺が、親しい人から聞いた話。

今から十数年前のこと。

彼女が仕事の帰りだったか、深夜に大阪方面へ車を走らせていた。

そんなとき、道端に20~30人のお遍路さん(四国八十八箇所を巡る人)の軍団がいたそうだ。

遍路巡りのバス待ちかと思い、彼女は横を通り過ぎたのだ。

ふとバックミラーを見ると、先ほどの人たちがいない。

彼女は不思議に思ったが、そのまま車を進めたそうだ。

そしてその後。

彼女の妹も、同じような集団を同じ現場で見たことがあると話したそうだ。

妹は、旦那とドライブ中に遭遇したそうだ。

不思議なことにその集団を妹には見えて、旦那見えなかったらしい。

見た場所やその集団が一致したことに、彼女は何を思ったのか、次の日にその場所へ再び向かった。

車を止めて、その場所をよく見てみると、そこは断崖絶壁の海岸だった。

更に道を挟んだ反対側は山。

道が大変狭く、一人でならともかく、あんなに大勢立てる訳がないそうだ。

更には、海側にはガードレールというか柵が並んでいたが、一部だけ欠けていたらしい。

怖くなった彼女は、直ちに車に乗り込み、走らせると、近くのドライブインに寄った。

そこの店員とさり気なく、あの目撃談を話してみると、どうやらあの現場は目撃談多発地帯だったようなのだ。

数年前、バスの転落事故で大勢の死者が出たらしく、その後お坊さんが供養したそうだ。

それからまたしばらくしたある日のこと。

彼女は、信仰している宗教のお坊さんと話す機会があり、あのお遍路さんの集団のことを話したところ、そういうのを見る人はたくさんいるらしい。

そしてあの集団は、怖いものではなく、むしろ道中安全を祈る存在だそうだ。

なお、彼女はその集団の顔が見えたそうだが、笑顔は笑顔でも、本当に生きている人の笑みで、確かにお坊さんの言うとおり、安全を祈ってるようだったらしい。
Hは成績優秀で親や教師から期待されてるような奴だったから、その分無意識の内にプレッシャーを感じて追い詰められてるんじゃないか?って言ってやったんだけど、オカルト好きな俺は面白そうだったので勉強会がてらHの家に泊まりに行くことにした。

で、詳しく話を聞いてみると

・最初に見たのは夏休みの終わり頃、洗面台の鏡を通してHの2m(目測)ほど後ろに立っていた
・それから鏡越しや窓に映る影越しに見えるようになった
・9月半ばから徐々に近付いてきて、今では1mあるかないかの距離にいる
・見えるのは黒っぽい焦げ茶のワックスで固めた短髪の男で、黒っぽいシャツを着ていて、白目を向いている

とのこと。

相談されたその日のうちに泊まる用意をしてHの家に行った。

家中の鏡という鏡に布がかけられていて、使う食器が全部陶器製なのを除けば、Hの家の中は普通だった。

特に何事もなく飯食って勉強してゲームしてHの部屋で寝てたら、夜中に急に目が覚めた。

お、金縛りか?ってwktkしたけど別にそんなことはなく、普通に動けた。

んでトイレでも行こうと思って保安球(ちょっと明るいアレ)をつけて、部屋の空気が妙に淀んでたからカーテンを開けたら、窓の向こうで妙な影が俺の後ろに映ってた。

Hが言ってた例の奴だと直感した。

そいつは俺の方を見てるんじゃなくて、俺の布団の上に立ってHを見下ろしていた。

影だと思ったのは奴が黒い服を着てるからで、髪の毛は確かに焦げ茶だった。

恥ずかしながら俺は恐怖で動けなくなった。

なんていうか、身体の芯が冷たくなる感じがした。

窓から目を逸らしたかったけど、少しでも身動きした途端にそいつが俺の方を向きそうで動くに動けなかった。

まぁ、窓に映ってるということは俺の後ろにいるっていうことに気付いて振り返る勇気もなくなったけど。

で、そのまま棒立ちでずっと立ち尽くしてたらだんだん空が白んできて、俺の姿が窓に映らなくなってきた辺りでやっと緊張が解けてそのまま布団に入って寝た。

朝になってHに「夜中に起きたっぽいけど何か見たか」って聞かれたけど、俺はなにも見てないって答えておいた。

Hの布団と俺の布団はすぐ隣だったから、奴とHはもう30cmくらいの距離にいるってことなんだけど、それを受験やらなんやらでナイーブになってるHに伝えるのは残酷な気がしたから。

結局その後も奴に付きまとわれてたみたいだけど大きな事件もなく志望校に合格し、一人暮らしするようになってからは奴の姿を見てないらしい。俺も見てない。 

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