不思議な体験 廊下に人が歩く音
実家は、小学生のころに引っ越したマンション。
築年数は、だいたい30年くらい。
以前は誰かが住んでいたこともあるらしいけれど、20年ほどは私の家族が住んでる。
話は過去にさかのぼり、私が小学6年生のころ。
中学受験があったため、昼間から自室にこもり勉強をしてた。
実家はそれほど広くない。
玄関をあがるとすぐ右手にトイレ、左手に私の部屋、トイレの隣にお風呂があり、お風呂の横にドアを隔ててリビングがある。
このリビングに行くまでの廊下は、歩くときにギシギシと少し軋む。
自分の部屋にいても、家族がトイレに行くのが音ですぐに分かる。
話を戻す。
自分の部屋で勉強してると、リビングから廊下がギシギシ言い出した。
誰か来た、と一瞬思ったのだが、ギシギシはリビングの方へ戻っていった。
あれ?
でもまたギシギシがこちらに向かって来る。
そして、戻っていく。
音の移動するスピードは、あまり速くない。
普通に歩くよりも遅いくらいだったように思えた。
数回、ギシギシの往復が繰り返されたので、気になってドアを開けて確認したが廊下には誰もいなかった。
リビングのドアが開いた音も聞こえなかったし、すりガラスのついた自室のドアに人影も映ってはいない。
昼間だったこともあり、それほど怖いとは思わなかった。
その後、忘れかけていたくらいだった。
それから時間がずいぶんと経過し、去年のこと。
私は、数年ぶりに実家に戻ることになった。
しばらくは何事もなく過ごしていて、今から数ヶ月前の夜中。
なかなか寝付けずに、トイレに行きたくなった私は、ベッドから起き上がった。
そのときに、リビングからお風呂場の手前の洗面所までの廊下が、ギシギシと音を立てた。
実家では猫を飼っていて、たまに吐いてしまうので、父親が片づけてるのかな、と思った。
ギシギシは、リビングの方へ戻っていった。
でもすぐに、ギシギシ音は洗面所の方へ向かってゆく。
リビングのドアが開く音は聞えなかった。
ギシギシの他になにかの気配はする。
トイレの水音もしない。
そのとき、小さくだが「ニャーン」と聞こえた。
あ、やっぱり父親が猫の掃除してるのか。
リビングのドアは、初めから開いてたんだろ。
ギシギシ音は、リビングへ戻っていった。
私は安心して、自室のドアを開けて、トイレに行く。
廊下には誰もいなかった。
リビングのドアも、閉まっている。
翌朝になり、昨夜のことを父親に聞いた。
父親は一晩中、ぐっすり寝てたとのこと。
「でも、猫も鳴いてたし!」
と言うと、
「猫も爆睡してたよ。」
と返事をされた。
あれは何だったのだろうという不思議な体験。