自殺サイトの運営目的

自殺サイトの運営目的

この話は、真実かどうかは分かりません。

あなたがご判断ください。

自殺サイトの運営目的

今から10年前。

当時の自分は19歳のフリーターで、ガソリンスタンドの夜勤バイトへ原付で向かう途中に交通事故に遭った。

ウィンカー無しで右折してきた軽自動車と正面衝突したのだ。

フロントガラスに顔面強打。

身体はふっとばされて、重傷を負った。
大腿骨骨折、2ヶ月半ほど入院。

右足の中には宇宙にいくという、金属の棒を入れられて退院した。
もちろん、バイトはやめることになった。

右足の筋肉は全部無くなってしまったし、一年後には金属を抜く手術もある。

ニート街道まっしぐらになってしまった。
でも、車にはねられた直後に感じた「今死んだら、誰にもお別れすらできない。明日に自分は居ない。」という恐怖を思い出すと、その恐怖を乗り越えたのが今の自分だとか思えて、妙に活力が出てきていた。
実際は、「痛い痛い」と喚いていただけで、救急隊や医者や看護師や家族に救ってもらったわけだけど。

生きる活力はあるものの、体は動かないから、毎日インターネットばかりやっていた。
ADSLが普及して、2chではFLASHとかが流行ってた頃の話だ。
ニートではあるものの、怪我人だから朝から居間のパソコンでネットをしながらワイドショーを見ていても何も文句を言われない。

テレビで取り上げられている話題は「自殺サイト」だった。
自殺サイトが、今もあるかは知らない。

それは、自殺したいけど一人で死ぬのは怖いという人たちが、集団で自殺をするために志願者を募るサイトだった。

テレビで見て、自殺サイトとやらを調べてみた。

すると、色々と出てくる。
色々とサイトを覗きながら一番書き込みの多い場所を閲覧した。
なぜ自殺に仲間が必要なのか、管理人はどうしてサイトを作る手間をかけてまで自殺者を募り自由にやり取りさせるのかなど、興味が湧いたのだ。
「○○県住みで車出せます。練炭で5人まで募集です。」
そんな内容の書き込みがある。

はっきり言って、死のうという奴の心理は理解できないが、こんなことを書くのは逆に殺人癖でもあるんじゃないか?という興味も湧いてきた。
メールを出して話を聞いたりもした。

主催の人間にメールすると、胡散臭い奴らばかりだった。

更にはTV関係者と名乗る人物も現れて、自殺志願者にインタビューがしたいとか、そんな書き込みを始めた。

そいつにも、メールを送ってみた。
そいつはプロだけど、自分と同じように興味があったようだった。

そして、管理人と連絡を取りたがっていた。

「ここに集まる人はグズばかりだな。生きるのか死ぬのかハッキリしろよ。」
何人かと連絡を取るうちに、自分はそんな風に思いはじめてしまい説教を始めた。

自殺が否定されるべき事だとすると、死にたいと思っていないニートである自分は、強気に発言することができたのだ。

胡散臭い主催者の揚げ足を取って、志願者に説教をくれた。

新しい発言があるたびに、サイトを荒らしまわった。
今思うと、足が折れてニートやって、将来が不安で仕方ない自分にとって、弱い者イジメをするには格好の連中だったんだなと思う。

俺もクズだった。
生きろ生きろの一方、グダグダ言わないで死ね、誰も助けやしないぞと、親の金で生活してネットしてる俺が偉そうに語っていた。

俺は一人では無かった。
そこで大暴れするうちに、2人の友人ができた。

一人は17歳でちょっと精神病入っている「アヤ」という子と、もう一人はパソコンに強い「黒猫さん」という人だ。
俺達は、メッセンジャーでよくチャットしていた。
アヤは自分と同様に、荒らし回って掲示板の機能をほぼ壊滅させていたのだが、黒猫さんは俺達とは違って、主催者や志願者のメールアドレスにメール爆弾やらウィルスやらを送り込んでいたらしい。
そして、稀に発言するときには「ねえ、管理人さん」と話しかけていた。
そんなこんなで、掲示板荒らしは2ヶ月ほど続いた。
俺達はいつも同じ掲示板でダベり、検索ランキングで上位だったサイトの掲示板はもはや、集団自殺嘲笑掲示板へと姿を変えていた。
俺達3人は、その掲示板だけを荒らし続けた。
俺は客が一番現れるそのサイトを、手動で駆逐することを目的としていた。
アヤは友だちになった俺とよく話せるから、そのサイトに居たのかも知れない。
ただ、黒猫さんは俺達の浅はかな考えとはちょっと別の目的があったみたいだ。

ある日のこと。

いつも通り、ネット巡回していて「集団自殺募集掲示板」のブックマークをクリックした。

そしたら、いつもの背景なのに、全く別のサイトが立ち上がった。

何度クリックしても間違いではない。
掲示板のタイトルは

「○○(俺のHN) SHOULD DIE」

今までのログは全部流れてしまっていて、そこには大量のハングル文字のスレッドが乱立していた。
尋常な数ではない書き込みだった。
慌てて、メッセで黒猫さんに連絡した。
その当時、ハングル文字が何を意味するかなんて俺には想像もつかなかった。
ネットで嫌韓が本格化するのはそれから2年後くらいからだったし、本当に意味が分からなかった。
ちなみに、ウチのパソコンはSOTECだった。

だってそんな国だなんて知らないし、恨まれてるとも知らなかった。

黒猫さんから返事があった。
「ハングル文字で貴方の居場所を特定して殺す方法を話し合っています。」
「前々から尻尾を掴みたかったのですが、貴方のような戦法が一番効果的だったんですね。ありがとう。」

意味が分からなかった。

なぜ、自殺募集を妨害した私に向けられた言葉がハングル文字だったのか?
なぜ、自分は死ぬ必要もない管理人がサイトを立ちあげて自殺掲示板を作る必要があったのか?
なぜ、TV関係者と黒猫さんが表舞台に立たない管理人にずっと執着したのか?

浅はかだった自分が知ったのは、その2年後だった。
黒猫さんは、こんな話は面倒くさくて私には教えてくれなかったのだと思う。
自殺したい人を募る需要に合わせた掲示板なんかじゃない。
日本語で作り、日本人が死ぬことを目的にしたとんでもないものだった。
その後も、色々と自殺の方法を紹介したサイトが出てきてるよな?

俺はその事件のあと、消防士になったんだ。
硫化水素自殺が流行った時に、2chで硫化水素は綺麗に死ねるとか書いてる奴が居て、俺は否定したんだ。

濃度によっては肌が緑色になるよ、ていうか綺麗な死体なんて現場になかったって。

緑色になるって書いてる人は他にもいるけど、本当にそうだった。

そしたら、必死で噛み付いてくる奴らが居たんだよ。
日本人が自殺して得というか、満足する人間たちがああいうサイトを作って、案内してるんだよ。
別に最初から死にたい奴は死ぬんだけど、ああいうサイトを作って得してるのは誰なのか、すごく合点のいった話だと思わないか?
思わなくても俺の目の前で起こった話だけどさ。

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