おかしな話 実在したまっくろくろすけ(ススワタリ)
私が小学校の3~4年生だった頃の話。
怖い体験というより、おかしな話なんです。
当時の私は、大分県の竹田市というところに住んでいました。
家の近くには、昔使われてたキリシタン(昔の日本、戦国時代から江戸時代までのキリスト教徒の呼び名)の礼拝堂がありました。
礼拝堂っと言っても綺麗な建物ではなく、山を無理やりくり抜いた洞窟のような場所でした。
中にはキリストの人形みたい物が、チョコンと置いてあるだけの汚い場所。
当時、私の通ってた小学校では、この礼拝堂には、まっくろくろすけ(ススワタリ)が出るという話が話題になっていました。
夜暗くなってから行くと出ます。
実際に行ってみると、本当にわんさか出るのです。
20匹くらいが、洞窟内でひしめきあっている感じ。
壁とか地面に、人の顔サイズくらいの黒いモヤモヤがたくさんいるのです。
ときには、洞窟から外に出て、こちらに向かってくるので、そんなときは友達と「ギャーギャー」わめきながら逃げた思い出があります。
まっくろくろすけの正体が知りたくて、大人に聞いてみると。
「あー、あの黒いやつな。分からんけど、あまり近づくなよ。」
と、いった感じのことを、言われるだけで。
そして。
私が16歳になり、大阪に引越し、もう大分に戻ることもなく大阪で就職しました。
大人になると、まっくろくろすけのことなんかすっかり忘れてしまっていました。
・・・・今から、半年前のこと。
同僚とジブリの話になり、盛り上がっていたとき、ふと当時のことを思い出しました。
同僚にも、この話をしてみたんです。
その時に初めて知りました。
まっくろくろすけが、架空の生き物であることを。
その後、他の知り合いや友人に聞いても、皆「まっくろくろすけは、架空の生き物だ」と言います。
子供の頃に見たあれは、何だったのか不思議に思ったものの、他の生き物を見間違えたのだろうくらいに思っていました。
・・・・つい先々週、大分県にいた頃にお世話になっていた方が亡くなったと連絡が入りました。
葬儀に参加するために、約10年ぶりに大分県竹田市に帰ったのです。
これが良い機会だと思い、真相を確かめようと、昔の友達を数人呼びました。
そして、葬式が終わった後、例のキリシタンの礼拝堂洞窟に行ってみたのです。
洞窟に到着したのが夜の8時くらいでした。
昔なら、まっくろくろすけが洞窟の入口辺りでワサワサしてる時間だったのですが、そのときは1匹も見当たりません。
おかしさを感じながらも、もっと洞窟に近づこうとしたら、近所に住む民家のおばさんが、
「なにしちょん?どちらさん?」
と、不審者を見るような目で見てきました。
怪しまれぬように、素性を話して(いちおう顔見知りだったので)、軽く世間話をした後、
「おばちゃん、昔ここらにおった、まっくろくろすけはどこ行ったん?」
と尋ねると、さっきまで笑顔が嘘のように、険しい顔になって、一言。
「全部、死んだわ!」
その言葉で急に怖くなってしまい、友達ともすぐに解散し、その足で大阪に帰ってきてしまいました。