不気味な話 遊びたい女の子
後輩から聞いた話。
後輩は、４人兄弟で、体験したのは１番上の兄貴。
その兄貴が、小学校低学年のころのこと。
ある日。
兄貴は、友人数人と近所のグランドで野球をして遊んでいた。
グランドの周りは、雑木林になっていて薄暗かった。
野球をしていた兄貴が、ふと雑木林の方を見ると、誰かがこちらを見ていることに気づいた。
よく見ると、それは自分たちと同じ歳くらいの女の子で、木の陰から顔を半分だけ覗かせてこちらをジッと見ていた。
その子は知らない女の子だったが、ずっとこちらを見ていたので、一緒に遊びたいのかと思った兄貴。
その場にいた友人と相談して、女の子に声をかけ仲間に入れてやろうということになった。
野球を一時中断して、みんなで雑木林の方へ行き、
「一緒に遊ぼうよ。」
と、相変わらずこちらを見ている女の子に、声をかけた。
すると、女の子は木の陰に顔引っ込めて隠れてしまった。
兄貴たちは、女の子が照れてしまっているのかと思い
「ねぇ！」
と、木の陰を覗き込んだ。
でも、木の陰には誰もいなかった。
「あれ？」
辺りを見回してみると、今度は別の木の陰から、さっきと同じように顔を半分出した女の子がこちらを見ている。
兄貴たちは、また声をかけながら女の子の方に近づいて行った。
しかし、女の子はまた、木の陰に隠れてしまった。
今度も木の陰を覗いても、女の子はいない。
そして、また別の木の陰から、こちらを見ている女の子がいるのに、友達が気付いた。
次も、兄貴たちが近づくと顔を引っ込めてしまい、木の陰を見ると誰もいないのだ。
しかも、女の子が移動するところを誰も見ていない。
気が付くと、別の木にいる。
そんなことが何度も続いていき、兄貴たちはだんだん気味が悪くなってきた。
怖くなったためか、今日はもう帰ろうということになり、女の子は放っておいて帰ることにした。
帰り道。
「さっきの子、気持ち悪かったな。」
といった話をしていると、その場にいた友達の１人が急に叫んだ。
そいつは後ろを見て、
「あれ！あれ！」
と、なにかを指差している。
皆が後ろを振り向いてみると、さっきの女の子が電柱の陰から顔半分だけ出してそこにいたのだ。
その瞬間、気味悪さを通り越して恐怖に駆られてしまった。
それは、その場にいた皆も同じだったようで、
「逃げろ！」
誰かが叫んだ。
走り出すために前を向くと、今の今まで後ろにいたはずの女の子が、今度は前方の電柱の陰から顔を半分出していた。
ありえない・・・・
この女の子は、人間じゃない。
兄貴たちは、パニック状態になり悲鳴をあげながらバラバラに逃げ出した。
兄貴は、目を瞑って電柱の横を走り抜け、全速力で家まで逃げ帰り、押し入れの中に閉じこもり、親が帰って来るまで、ずっと泣いていた。
その後。
その女の子を見たことはない。
遊びたかっただけなのかもしれないけれど、顔を半分しか出さないことになにか意味はあるのか？と、想像するとけっこう怖い・・・・