かなり怖い話 温泉旅館の求人広告

かなり怖い話 温泉旅館の求人広告

かなり怖い話 温泉旅館の求人広告

そこは、伏せておきますが某県の旅館が、バイトを募集しているとのことでした。

その場所は、私が旅行に行ってみたかった土地。

条件は、夏の期間だけで時給はあまり良くありませんでしたが、住みこみで食事も付いているので、強く惹かれました。

ここのところカップラーメンばかりの生活。

まかない料理でも手作りの食事はやはり魅力で、さらには行きたかった場所。

私は、迷うことなく電話しました。

「・・・・はい。ありがとうございます!○○旅館です。」

「すみません。求人広告を見た者ですが、まだ募集してますでしょうか?」

「え、少々お待ち下さい。・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、・・・い、・・・そう・・・・だ・・・・・・・・」

受付は、若い感じの女の人でした。

電話の向こう側では、低い声の男の人(おそらくは宿の主人?)と、小声で話しているようでした。

私は、その間。

ドキドキしながら、神妙に正座なんかしちゃったりして、待ってます。

しばらく待つと、相手側が受話器を握った気配がしました。

「はい。お電話変わりました。えと、、、バイトですか?」

「はい。××求人でここのことをしりまして、是非お願いしたいのですが・・・」

「あー、、ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。いつから来られます?」

「いつでも、大丈夫です!」

「じゃあ、明日からでもお願いします。えーっと・・・お名前は?」

「神尾(仮名)です」

「はい、神尾君ね。早く、いらっしゃい、、、」

とんとん拍子だった。

運が良いとしか言えない。

私は、電話の用件などを忘れないように録音するようにしている。

再度電話を再生しながら必要事項をメモった。

住みこみなので、忘れ物があってはいけない。

保険証も必要とのことだったので、忘れずにメモする。

その宿の求人のページを見てみると、白黒の写真で宿が写っていた。

コジンマリとしているが、自然に囲まれた雰囲気の良さそうな場所だった。

バイトが決まったことでなんだか、ホっとした。

だけど・・・・何かがおかしい気もした・・・・

ただ、それを気にしないように、鼻歌を歌いながらカップラーメンを作った。

やはり、なんだか鼻歌さえもおかしく感じる。

日はいつの間にか、とっぷりと暮れていて、開けっ放しの窓からは、湿気を多く含んだような生温かい風が入ってきている。

私は、できあがったカップラーメンをすすりながら、何がおかしいのかにを考えていた。

条件は良いはずだし、お金を稼ぎながら旅行もできてしまう。

きっと、女の子との出会いもありそうだ。

だが、何かおかしい。

暗闇だから窓ガラスが鏡になっている。

その暗い窓に、自分の顔が映っていた。

なぜなのか、まったく嬉しくない。。。。

理由は不明だが、ひどく落ちこんでいた。

窓に映った年老いたかのような、生気の感じられない自分の顔を見つめ続けた。

次の日、ひどい頭痛で目が覚めた。

激しく嗚咽した。

風邪・・・?

私はフラフラしながら、歯を磨く。

歯茎からは、血が滴る。

鏡で顔を見て、ギョッとした。

目の下には、墨で書いたようなクマが出来ており、顔は真っ白。

それは、、、まるで、、、。

バイトに行くのを止めようか、、とも考えたが、準備は夜のうちに整えてしまっている。

だが、、気が乗らない。

そのとき、電話が鳴った。

「おはようございます。○○旅館の者ですが、神尾さんでしょうか?」

「はい。今、準備して出るところです。」

「わかりました。体調が悪いのですか?失礼ですが声が、、」

「あ、すみません、寝起きですので。」

「無理なさらずに。こちらについたら、まずは温泉など入って頂いて構いませんよ。初日はゆっくりとしててください。そこまで忙しくはありませんので。」

「あ、大丈夫です。でも、ありがとうございます。」

電話を切った後に、家を出る。

あんなに親切で優しい電話。

有難かった。

しかし、電話を切った後で、今度は寒気がしてきた。

玄関の扉を開けるとめまいもした。

「と、、とりあえず、旅館まで行ければ、、、」

私は、通り過ぎる人が振りかえるほどフラフラと駅へ向かった。

やがて、雨が降り出した。

傘を持って来てない私は、駅まで傘なしで濡れながら行くことになった。

激しい咳も出てくる。

「、、旅館で休みたい、、、、」

私はびしょ濡れで駅に辿りつき、切符を買った。

そのとき自分の手を見て驚いた。

皮膚がカサカサだ。

雨で濡れているが、肌がひび割れてしまっている。

まるで老人だ・・・・

病気・・・・?

旅館まで無事に行ければいいけど・・・・

私は、手すりにすがるようにして足を支えて階段を上った。

駅の階段を上るだけなのに、何度も休みながら。

電車が来るまで、時間があった。

私は、ベンチに倒れるように座りこみ苦しい息をした。

ぜー、、、ぜー、、、声が枯れている。

手足が痺れている。

頭痛が波のように押し寄せてくる。

ゴホゴホ!

咳をすると、地面には血が散らばった。

ハンカチで口を拭うと、そこには血がベットリ・・・

かすむ目で、ホームを見据える。

「早く、、旅館へ、、、」

やがて電車が轟音と共に、ホームへ入ってくると、ドアが開いた。

乗り降りする人々を見ながら、私はようやく腰を上げた。

腰痛もすごいことになっている。

フラフラしながら、乗降口に向かう。

体中が痛い。

あの電車に乗れば・・・・

そして、乗降口に手をかけたとき、車中から鬼のような顔をした老婆が突進してきた。

老婆にぶつかり、私はふっ飛ばされ、ホームに転がった。

老婆も、少しよろけていたが、再度襲ってきた。

私は、なぜか老婆と取っ組み合いの喧嘩を始めた。

悲しいかな、相手は老婆なのに私の手には力が入らない。

「やめろ!やめてくれ!俺は・・・あの電車に乗らないといけないんだ!」

「なぜじゃ!?なぜじゃ!?」

老婆は、私にまたがり顔を鷲掴みにして、地面に抑えつけながら聞いた。

「りょ、、旅館に行けなくなってしまう!」

やがて、駅員達が駆け付けてくると、私たちは引き離された。

電車は、行ってしまっていた。

私は立ち上がることも出来ず、人だかりの中心で座りこんでいた。

やがて、引き離された老婆が息を整えながら言った。

「おぬしは、引かれておる。危なかった・・・・」

そして、老婆は去っていった。

私は、駅員と2つ3つ応答をしたが、すぐに帰された。

駅を出た後は、仕方なく家に戻る。

すると、不思議と体の調子が良くなってきた。

声も、普段通りに戻ってきた。

鏡を見ると、顔の血色もいい。

不思議に思いながら、家に帰る。

荷物を下ろし、タバコを吸う。

落ちついてから、やはり断わろうと旅館の電話番号を押した。

すると、無感情な軽い声が返ってきた。

「この電話番号は現在使われておりません・・・・」

あれ?

もう一度、かけ直す。

「この電話番号は現在使われておりません・・・・」

混乱してしまった。

確かにこの番号から、今朝電話が掛かってきたのだ。

おかしい・・・おかしい・・・おかしい。。。

そうだ。

通話記録をとっていたんだ。

最初まで巻き戻す。

、、、、、、、、、キュルキュルキュル、、、、、     ガチャ

再生

「ザ、、、ザザ、、、、、、、、はい。ありがとうございます。○○旅館です」

あれ、、?

私は、悪寒を感じた。

若い女性だったはずなのに、声がまるで低い男性のような声になっていた。

「あ、すみません。求人広告を見た者ですが、まだ募集してますでしょうか?」

「え、少々お待ち下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、・・い、・・・そう・・・・だ・・・・・・・・」

ん??

私は、ここで何が話し合われてるのか聞こえた。

巻き戻し、音声を大きくする。

「え、少々お待ち下さい。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、・・い、・・・そう・・・・だ・・・・・・・・」

巻き戻す。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザ、、、ザ、、ザザ、、、、、むい、、、、こご、そう・・・・だ・・・・・・・・」

巻き戻す。

「さむい、、、こごえそうだ」

子供の声も入っている。

さらに、その後ろでは、大勢の人たちが唸っているような声まで聞こえる。

うわぁ!!

私は・・・汗が滴った。。

思わず、電話から離れる。

すると、通話記録がそのまま流れる。

「あー、、ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。いつからこれますか?」

「いつでも私は構いません」

記憶にある会話だ。

しかし、私はおじさんと話をしていたはずだ。

そこから流れる声は、地面の底から響くような老人の声だった。

「神尾くんね、、はやくいらっしゃい」

そこで、通話が途切れる。

体中に、嫌な汗が流れ落ちる。

外は、土砂降りの雨だった。

金縛りにあったように、動けない。

でも、時間と共に少しだけ落ちついてきた。

気が付くと、そのまま通話記録が流れていた。

今朝、かかってきた電話の分だ。

しかし、録音された話し声は、なぜか私のものだけだった。

死ね死ね死ね死ね死ね

「はい。今準備して出るところです」

「死ね死ね死ね死ね死ね」

「あ、すみません、寝起きなので」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

「あ、、大丈夫です。でも、、ありがとうございます」

私は、反射的に電話の電源ごと引き抜いた。

乾いた喉を鳴らす。

な、、、、なんだ、、、なんだこれ、、

なんだよ!? どうなってんだ??

私は、そのとき手に求人ガイドを握っていた。

震えた手で、旅館のページを探す。

なにかが、おかしい。

、、ん?

身体が震える。。

そのページはあった。

でも。。。

綺麗なはずだったその旅館の1ページだけ、シワシワで、何かシミのようなものが大きく広がり少しはじが焦げていた。

どう見ても、そのページだけが、古い紙質なのだ。

それはまるで、数十年前の古雑誌のようだ。

そして・・・そこには、全焼して燃え落ちた旅館が写っていた。

記事が書いてあった。

死者30数名。

台所から出火した・・・

旅館の主人と思われる焼死体が、台所で見つかったことから料理の際に炎を出したと思われる。

泊まりに来ていた宿泊客達が逃げ遅れ、炎にまかれて焼死。

なんだ。。求人じゃない。。

私は、声も出せずにいた。

求人雑誌が、風にめくれている。

痺れた頭で、石のように動けなかった。

ふいに、雨足が弱くなった。。

一瞬の静寂が辺りを包む。

電話が鳴り始めた・・・・

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