あなたの知らない世界 異次元への入り口
昔、あり得ない奇妙な体験をしました。
ある年のゴールデンウィーク。
当時の僕は、東京で独り暮らしをしていて、新卒のサラリーマンでした。
社会人になってから、初のゴールデンウィーク。
栃木の実家に帰省することにしました。
車を自分で運転して帰ったのですが、渋滞に巻き込まれ、途中のサービスエリアについたときにはけっこう疲れていました。
結局、実家に到着したのは２２時を過ぎになっていました。
家は、どことなく不気味で嫌な感じがしているように思えたのですが、霊感もない僕はそれほど気にせず中に入りました。
両親はまだ起きていてくれて、他愛のない会話をたくさんし、「ずっとここにいなさい」と言ってくれました。
ああ、東京で独りで暮らす僕を心配してくれているんだな、と少し嬉しく感じたものです。
ただ、どうにも空気がおかしいのです。
どこか邪悪で禍々しいようなものが、すぐ近くにあるような気がしてならないのです。
今日は渋滞と長旅で疲れているのかと、自室に行き休むことにしました。
・・・何か、妙な胸騒ぎがして眠れません。
僕は、喉の乾きを覚えてキッチンへと行きました。
家の中はすべて電気が消えていたので、両親は眠っているようです。
飲み物を探そうと冷蔵庫を開けると、中からは酷い異臭がします。
見てみると、冷蔵庫の中の物はすべて腐敗しているようでした。
なんだ？
賞味期限を確かめてみると、全ての食品が５年近く前に賞味切れです。
嫌な予感と、嫌な汗・・・
とにかく、両親に聞いてみなければ。
両親の部屋に行くと、その部屋には誰も居ません。
それどころか、布団さえ敷いてありません。
部屋はずっと使われていないかのように埃っぽく、良く見ると蜘蛛の巣まで張っています。
本能的な恐怖が僕を支配します。
これは明らかに異常だ。
すぐに、荷物をまとめて、外に停めてあった車に乗り込みました。
急いで車を出そうとすると、バックミラー越しに両親の姿が見えました。
あれはきっと、僕の本物の親じゃない。
大急ぎでその家から遠ざかりました。
行きに立ち寄ったサービスエリアまで逃げ切れた時に、やっと安心感に包まれました。
僕は、そのサービスエリア内に車を停め、昼過ぎまでそこで眠りました。
起きた後、怖かったのですが実家に電話をかけてみました。
母が受話器に出ました。
昨晩のことを尋ねてみると、僕は実家に帰ってきていないと言います。
一体どうなっているのでしょう。
戦々恐々としながらも、もう一度実家に行ってみると、あの重苦しく不快な空気感は全くなく、僕の知っている両親と家でした。
その日は、親子の会話を楽しむと泊っていかずに帰ることにしました。
帰り道で、僕の携帯が鳴りました。
実家からの着信です。
出てみると母なのですが、また、あの嫌な感じ、邪悪などす黒い何かを感じました。
母は、
「戻ってきなさい。。。。」
と言います。
僕は、防衛本能が反射的に働き、返事をせずに電話を切ると、携帯の電源も落としました。
この体験が何だったのか、いまだに謎なのです。
異次元の世界に迷い込んだのでしょうか？
このことがあってから、実家に帰ることに抵抗を感じてしまいます。