恐怖体験 偽物のお母さん
子どものころの話。
当時の僕は、2階建ての借家に住んでいた。
両親共働きで、母親は昼間にはほとんど家にいない。
学校から帰ってくると、ほぼ毎日僕は一人だった。
ある日のこと。
その日は学校からの帰りが少し遅く、夕方家に帰ってきた。
家に入ると、中は暗かった。
この時間なら、そろそろお母さんも帰ってくるはずだ。
念のため声をかけてみた。
「お母さーん、帰ってるー?」
2階から小さく返事が聞こえた。
「はーい。」
あれ?
お母さん帰ってるんだ?
今日は早いな。
もう一度確認。
「お母さーん。」
「はあーい。」
母の帰りが早かったためか嬉しくて、2階に駆け上がる。
階段を上った辺りでもう一度母を呼ぶと、奥の部屋から返事が聞こえた。
おかしい。
何がおかしいのか説明できないけれど、少しだけ奇妙な胸騒ぎがしたのだ。
母の声が聞こえた奥の部屋へと、僕は近づいた。
そのとき、1階の玄関の鍵をを開ける音が聞こえた。
続けざまに、母親が慌ただしく買い物袋を持って家の中に入ってくる音が聞こえた。
「○○(僕の名前)、帰ってるー?」
明るい声で呼んでいる。
え?
さっきまでの返事は誰だったんだろう?
怖かったけれど、僕はお母さんのもとに階段を駆け下りていく。
その前に、ふと奥の部屋に目線を走らせた。
奥の部屋の扉は、ギィと少し開いた。
扉の隙間からは、白い顔をした奇妙な人間がこちらを覗いていた。
あのとき、奥の部屋に入っていたら、僕はどうなっていたのだろうか・・・・