不思議な体験 おばあちゃんの形見の市松人形
これは、子供のころの話。
俺の家には、物置の代わりとして使っている屋根裏部屋があった。
俺が成長してくると、だんだんとその部屋は俺のゲーム部屋として使われるようになった。
学校から帰ってくると、屋根裏に入り浸る毎日。
なんだか秘密基地のような感覚だったように思う。
誰にも邪魔されずにゲームができるお気に入りの場所。
でも、一つだけ気になることがあった。
テレビの真向い(ゲームしている俺の背後)に、不気味な市松人形が3体置いてあったのだ。
テレビの心霊特集なんかで、髪が伸びたとか呪われているとか話題にな理想な雰囲気の人形。
めっちゃビビリの俺。
やけに人形を気にしてしまう。
3体のうち1体は、特に気持ち悪かった。
やたらと精巧に作られていて、目は今にも動き出しそうな感じでとても怖かった。
どうしても恐怖が強くなったときは、「今、俺を見ているな!」と心で叫びながら、ぱっと後ろを振り返る。
更には、
「俺、お前が見てるのに、気がついてるから。愚かな真似はするなよ。。。俺、こう見えて霊能力高いし、もしも俺に手を出したら守護霊(自分では勝手に死んだおばあちゃんだと思ってる)が 黙っちゃいないぞ。」
警告したりしていた。
俺の警告の効果かどうか知らないけれど、いつも不気味なオーラを放つ不気味人形も、髪も伸びず、目玉も動かず、大人しくしてくれていた。
ただ、いつも背中に感じる悪寒と視線だけは感じ続けていたが・・・・
俺がさらに大きくなると、一人部屋が与えらた。
屋根裏部屋は、物置としてだけ使われるようになった。
あるとき、家族で食事をしていたときに、ふと例の屋根裏の人形が話題に上がった。
だが、俺の話に両親が顔を曇らせる。
「人形は、1体しかないはずだよ。」
両親が言う言葉に、俺は反論した。
「何を言ってるんだ?人形は3体だし、1体が異常に不気味なんだよ。」
と、言うが両親は譲ってくれない。
では、みんなで確かめてみようということになり、久しぶりに屋根裏部屋へ。
行ってみると、不思議なことに人形は1体しかなかった。
あの不気味な奴1体だ。
両親曰く、その不気味な1体は、死んだおばあちゃんの大切にしていたものらしい。
ということは、俺がいつも感じていた、あの不気味な視線と悪寒は、あるはずのない2体からだったのだろうか・・・・?
もしそうだとすると、おばあちゃん人形が俺を守ってくれていたから、今の俺は無事なのかもしれない。
不気味に思っていたものが実は味方で、安全だと思っていたものが実は危険な存在だったのかもしれない・・・・