後味悪くてグロい話 娘を殺された母の復讐
注:読み終わった後の気分が良いものではないと思いますので、十分ご注意を。
ある霊能力者がいた。
霊能者は、なんらかの呪詛(しゅそ:神仏や悪霊の力を借りて呪うこと)の気配を感じた。
それは、ただ事じゃない力だったので、調査に乗り出した。
調査を進めていくと、ある神社にたどり着く。
境内で、見るからに病んでしまっていそうな女が「犬神」を作り出そうとしていた。(犬神とは、西日本に広く分布している犬霊の憑き物のこと)
犬神は、切断した犬の首を土の中に埋めて、その土を多くの人に踏ませてつくる。
病んでいる女は、この犬神で呪殺したい相手がいるのだという。
呪殺なんて良くないと、説得する霊能力者に、女は怒りかくすことなく事情を説明する。
女には、幼い娘がいて幸せに暮らしていた。
ある日のこと、娘は変質者にイタズラされて殺されてしまった。
逮捕された変質者には知能障害があり、裁判では法的な罰を免れてしまったのだという。
娘だけ無残に殺されて、その犯人はなんの御咎めがない。
この事実を受けて、女は気がふれてしまったのだった。
法が犯人を裁けないのならば、自ら引導を渡そう・・・・
こうして犬神は、強い憎悪の結晶化で素人の手でも強力に完成されようとしていた。
その犬神でなら犯人は殺せそうであった。
だが、人を殺すほどの呪いには反動も大きく、もしもこのまま実行すれば、仕掛けた女も無事では済まないだろう。
霊能力者は説得を試みるも、娘を惨い失い方をした彼女にはどんな言葉も届かなかった。
霊能者は苦肉の策として次のことを伝えることにした。
「あなたのそばにいる娘さんの霊は、今のあなたを見て悲しんでいますよ。」
と・・・・
霊能力者は続けた。
「あなたのそばには、娘さんの霊が漂っています。憎しみに取り憑かれている今のあなたを見て心配し続けています。娘さんの願いは、復讐なんかじゃありません。あなた自身が立ち直って、幸せにいきることです。」
と言い聞かせた。
憎しみの力は強くとも、もともと霊的なパワーを持たないその女には、娘の幽霊を見ることも、言葉を聞くことも叶わなかった。
だけれど、霊能力者の言葉を聞き、母は泣き崩た。
そして、娘が復讐を望まないのなら、無駄な報復をすべてやめることを決意する。
でも・・・・・
霊能力者は、大きな嘘をついていた。
女のそばにいた娘の霊が、母に強く請うていたのは、犯人への復仇(ふっきゅう:かたきを討つこと)だった。
娘は、犯人に与えられた地獄の苦しみを延々と語りながら、犯人にも同じ目にあわせてほしいと泣きながら訴えていたのだ。
霊能力者は真実を語ることなく、その場を立ち去って行ったのであった。