かなり怖い話 異界への入り口と友人のミイラ化
中学2年のときの話です。
日曜日に仲の良い友人達と3人で、映画を観に行くことになりました。
友人達を、仮にAとBとしますね。
僕の住んでる町は小さくて映画館はありません。
映画を観に街に行くのは、田舎の中学生にとって、ワクワクするような大きなイベントでした。
前日、ウキウキしながら明日を待ちわびていると、Bから電話がありました。
「ごめん、明日バイオリンの稽古になっちゃった。ちょうどさ、映画が終わるころに稽古も終わるから、○○の駅(映画館のそば)の改札で待ち合わせしようよ。」
と言われました。
Bはおぼっちゃま育ちなので、バイオリンをやっていました。
3人で、行くはずの映画は急きょ2人になってしまいましたが、映画の後で3人で遊べるようなので、「ま、いっか」とその日は眠りにつきました。
翌日。
変更通り、僕とAの二人で映画を観に行きます。
映画を観終わって、二人で映画の感想を話しながら、駅に向かおうとしたのですが。。。。
Aが、「このビルの3階まで上れば、駅へ続く歩道橋があるよ」と教えてくれました。
その街はわりと大きいので、駅前からいろいろなデパート等へ続く歩道橋が、3階ほどの高さで広がっていたのです。
信号待ちが少ないのならと、僕たちは映画館の横にあるビルに入りました。
そのビルには、小さな雑貨店がたくさん入っていました。
階段を上って3階までつくと、店側に入っていけるような扉が見当たりません。
このフロアは倉庫のようなもので、客が入るところではないのかな?
僕は
「仕方ない。1階に戻って、普通に歩こうか。」
と言うと、 Aがそれに反対。
「いや、もっと上ってみよう。4階からお店側に入れるかもしれないから、したら別の階段から3階に降りればいいよ。」
4階に上ってみも、扉はありませんでした。
5階へも行きましたが、扉は見当たりません。
だんだん、僕達は意地になってしまい、扉探しゲームのような感覚でどんどん階段を上って行きました。
10階くらいまで、上ったでしょうか。
僕は、少し不可解ことに気がつきました。
外からビルを見たとき、10階より低いビルに思えたのです。
でも、Aは「もっと上へ行くぞ」となぜだかノリノリ。
僕達は、階段をさらに上りました。
20階くらいまで来たときには、さすが異常だと思いました。
階段も、デパートの綺麗なものではなく、古くさくてジメジメしたような不気味な雰囲気です。
ゾンビゲームのバイオハザードに出てくる、苔の生えた嫌な感じの階段のようなイメージだと思ってください。
この時点で、相当恐怖に襲われていた僕は、
「ねえ、引き返そう!ここ、絶対おかしいよ・・・・」
と伝えると、先を行くAは僕に背中を向けたまま、
「ハハハ、変だね・・・」
と言うのです。
ふざけてるように思えて、少しだけ気分を悪くした僕は、
「何笑ってんだよ?とにかく戻ろう!」
と、語気を強めて言いました。
するとAは、
「ハハハ、変だね・・・・」
と返事をするのです。
さすがに、ムッとしました。
でも、階段を上っていくAの後ろ姿が不可思議なことに気がついたのです。
姿形はAなのですが、なんだか動作が変のです。
人間が人形を手で動かしているような感覚と言いましょうか。
ぎこちない動きで、ぎくしゃくしているのです。
僕はあまりに怖くて、足がすくんでしまい、その場に立ち止まりました。
するとAも立ち止まり、クルッと私の方を向きます。
「ハハハハハハハハハ、変だね・・・・変だね・・・・・ハハハハハハハ・・・・・」
僕は叫び声をあげました。
動作だけじゃなくて、顔の表情も怪奇でぎこちないのです。
顔そのものも、白目が無く眼球すべてが黒眼。
まるで、宇宙人のグレイのような眼でした。
僕は叫びながら踵を返し、全速力で階段を駆け下ります。
途中、足がもつれて転びそうになりましたが、なりふり構わずに無我夢中で駆けました。
・・・・・・・気がつくと、雑居ビルの一階にある薬屋さんの前で息を切らしてしました。
ここまでどうやって走ったのか具体的な記憶はありません。
もう、パニック状態だったのです。
そのまま、駅の改札まで行くと、Bが待ってました。
Bは
「遅いー。映画が終わってから、1時間も経ってるぞ!」
と怒っています。
でも、Aがいないことに気がつくと、
「あれ?Aはどうした?」
と聞いてきます。
僕は、まだ恐怖の中にいて、今にもAが後ろからあの奇妙な動きで追ってくるように思えてしまい、建物の中に逃げ込むことにしました。
Bを連れて駅にあるファーストフード店に入り、先ほど起きたことをBに説明しました。
上手に話を整理できなかったので、何度も「え?それどういうこと?もう一度詳しく話して。」とBに言われます。
最初、全く信じてくれていないような態度のBでしたが、最後には真剣な顔つきになってきました。
実は、Bには少し霊感があって、その日の出来事が尋常ではないことを理解してくれたのでした。
Bは、
「とりあえず、そのビルに行ってみよう。」
と言うのですが、僕はあんなところ2度と行きたくありません。
「Aを、ほっとけないだろ!」
「・・・確かに、あのときのAは、何か悪霊のようなものに憑かれたのかもしれない。」
二人は、例のビルまで行きました。
さっきと同じように階段を上ってみると3階にはCD屋に続く扉がありました。
あれ?
4階に上ってみると、そこはゲームセンターでした。
階段は4階で終わり。
ここは、4階建てのビルだったのです。
もう、やりようがないのでその日は家に帰ることに。
もしかしたら明日になれば、Aはいつもと同じくに学校に来るかもしれないと思ったのです。
次の日。
登校してみると、Aは来ていませんでした。
Bが、顔を青くしながら近づいてきて、今日変な夢を見たと言うのです。
その変な夢の内容は、Aが森の中を泣きながら裸足で歩いていて、「悔しい・・・悔しい・・・」と呟いている、のだというのです。
Bは、
「あれは、単なる夢じゃないような気がする。」
と続けました。
それから、数日経ってもAは帰ってきません。
Aの両親から捜索願いが出され、僕とBも警察に行き、いろいろ聞かれました。
でも、例の不思議な階段については言いませんでした。
1ヶ月後。
なんと、Aが発見されたのです。
でも、遺体となっての発見でした。
直接家族の方に聞いたわけではないのですが、 僕たちの住んでる町から100キロ以上離れている、隣県の山の中にある神社の境内の横で、干からびて死んでいたという話でした。
死後1ヶ月。
当時は、Aが亡くなったという不快な体験でしたが、日が経つにつれてこのことは忘れていきました。
それから、ずいぶん年月が経ち、この間Bに会ったときに、
「あれは、いったい何だったんだろう?」
という話になり、思い出した出来事です。